ピースウィンズはフェアトレードのその先へ
私たちピースウィンズには1990年代よりフェアトレード部が存在し、2002年からは東ティモールでの緊急支援後の復興支援として、小規模コーヒー生産者への技術指導と収入向上支援を、フェアトレードとしてやってきました。
ここでは、欧米諸国で言われる認証型(ラベル型)のフェアトレードと日本に多い国際協力型(輸入団体型)のフェアトレードについて、ピースウィンズの考え方と、我々のフェアトレードの未来について書いていきたいと思います。
フェアトレードの始まり、良いところと問題点
「フェアトレード」を直訳すれば「公平な貿易」です。先進国が行う国際的な貿易は、経済的・社会的に立場の弱い途上国の小規模生産者にとっては決して「公平な貿易」ではなく、時に貧困を拡大させると言われています。
このような経済格差をなくす公平な貿易を目指し、ヨーロッパを中心に1960年代からフェアトレード運動が広がっていきました。
途上国で作られた農作物や手工芸品を、通常の国際市場価格よりも高めの価格で買い取り、継続的に取引を行うことで、生産者の持続可能な生産・生活向上を支援する「人と地球にやさしい貿易のしくみ」です。

最近では、日本でもフェアトレードという言葉を聞いたり、セレクトショップやスーパーの店頭、コンビニエンスストアでフェアトレード商品を見かけたりすることも増えてきたと思います。ただ、日本では明確なフェアトレードに関する規則もないため、一言でフェアトレードと言っても製品にフェアトレードラベルと呼ばれる認証が付いているものと、ピースウィンズのピースコーヒーのようにラベルが付いていないものがありますが、違いはご存知でしょうか。
フェアトレードの2つのかたち
❶ フェアトレード認証型(ラベル型)
❷ 輸入団体型(国際協力型)
フェアトレード認証には生産者、販売者にとって様々な良いことがありますので少しまとめてみました。
ピースウィンズが考えるフェアトレード認証の良い点
- 市場に左右されない最低保証価格(生産者組合に対して)
- 産品の代金以外に支払われる組合に対する援助金がある(フェアトレードプレミアム)
- 生産者が生産コストを賄うために借り入れする必要がないよう、買い取り業者から支払いの前払いがある
- 児童労働、強制労働を排除する
- 有害なものを使わず人と環境に優しい
- フェアトレード商品であることの客観的な証明を得られる

このような認証型のフェアトレードの仕組みはルールがあるのでとても分かりやすく、大学でも教えられています。しかし、このような恩恵を受けるには認証を受けねばならず、様々な書類の作成の他、申請料などフェアトレード機構に支払う現金も必要なため、誰でも簡単にというわけにはいきません。
実際、私たちの事業地である東ティモールは、長い占領の歴史を経て2002年に独立したばかりの若い国です。山間部のコーヒー産地では教育や電気・ガスといった生活基盤の整備がまだ途上にあり、生産者一人ひとりは腕の良いコーヒー農家でありながら、書類の作成や申請料の工面といった認証取得のハードルを自力で越えることは(今のところ)現実的ではありません。東ティモールだけでなく、貿易の恩恵を必要としているにも関わらず、フェアトレード認証のテーブルにつけない生産者が世界中にまだたくさんいます。
以下は認証制度そのものを否定するものではなく、私たちが長年の現場経験の中で感じてきた課題です。
ピースウィンズが考えるフェアトレード認証の課題
- 書類作成が困難な人は申請できない
- 申請料が払えない人は申請できない
- フェアトレード取引の主な対象は生産者組合であるため、最低保証価格やプレミアムが組合の中でどう使われ、組合員である生産者一人ひとりにどこまで届いているかは、外からは見えにくい → 組合の運営コストや役員への配分が大きくなり、生産者の手取りが十分に増えないケースもあると指摘されています
- 対象が生産者ではなく、生産者協同組合なので、組合がない、または形成できない小規模な生産者はフェアトレードに携われない
- 市場価格が暴落した際、最低買い取り価格が設定されているため、フェアトレード製品と市場価格の間に大きな開きが生まれることがある
- 品質が伴わなくても最低買い取り価格があるため、品質に見合わない価格設定になりやすいという声がある
- 最低買い取り価格が保証されているため、品質を高めてより良い価格で買ってもらおうという動機が生まれにくい面がある、と私たちは現場で感じています
- フェアトレードをやっている企業のフェアトレード製品以外の買い取り方法などをよく知らないにもかかわらず良い企業に見えてしまう
- 生産国における非フェアトレード産品とフェアトレード産品の買い取り価格の差と、最終消費者が非フェアトレード製品とフェアトレード製品を買ったときの価格の差が大きすぎる
たくさん課題を書きましたが、ではフェアトレード認証は悪か?というとそういう訳ではなく、フェアトレードに関わらず仕組みがあれば希望しても加われない人も出るし、漏れる人もいる。そういう人たちを国際協力の一環として我々NPOがサポートしていくという今の日本のフェアトレードの形はちょうど良いのかもしれませんね。
ピースウィンズのフェアトレードは仕組みにとらわれない次世代のフェアトレード
我々のフェアトレードの形態は一般的に国際協力型、輸入団体型のフェアトレードと呼ばれており、仕事の中で様々な形のフェアトレードに触れる機会がありますが、やればやるほど「フェアトレード」の意味がわからなくなる時があります。
- 先進国の”フェア”とは何なのか
- 具体的に何がどう”フェア”なのか
- 貿易に”フェア”はあるのか
- そもそも私たちも”フェア”なのか
そこで、ピースウィンズでは自分たちなりに考えた、東ティモールの生産者に寄り添った貿易の形態を、独自のフェアトレードとして行っています。
一般的な流通では、生産者から消費国で商品になるまでに、様々な企業が関わっており、関所のようにそこを通過するたびに手数料が加算されていきます。一方、ピースウィンズの場合は、コーヒー生産者への栽培指導から始まり、買取、加工、輸出、輸入、卸売りと小売りというコーヒーのサプライチェーンを端から端まですべてを行うことにより、利益を最大化するだけではなく、品質の徹底管理・担保もできることから、みなさまに美味しくて安全なコーヒーを届けることができます。

[上段オレンジが一般的な流通、下のブルーがピースウィンズのサプライチェーンの形態です]
また、ピースウィンズのフェアトレードと企業が行うフェアトレードの大きな違いは、コーヒーの売買で生まれた利益を株主に配分することなく、100%を東ティモールに還元していることです。仮にそれ以上に利益が生まれた場合でも、世界中で支援活動を行っているピースウィンズの支援事業に使われます。
このようなフェアトレードは利益を生むことを目的とする企業のフェアトレードには真似ることは難しく、一般的に言われているフェアトレードと同じ言葉では言い表せない、私たちならではの仕組みにとらわれない「フェアトレードのその先」にチャレンジしています。
貧しい人を助けるコーヒーではなく、美味しく魅力的なコーヒーに
今までフェアトレードといえば、どうしても、「味は二の次で、助け合いの精神で貧しい人が頑張って作った産品を高く買ってあげよう」というような製品に対するネガティブなイメージもありました。しかし、品質・味も伴ったコーヒーでなければ、一時的な感情と購買に終わってしまい、生産者にとっても消費者にとっても本当の意味でフェアではない状態になってしまいかねません。
コーヒー生産者が不当に搾取されることなく、生計・生活の質を向上することはもちろん大事ですが、コーヒーを飲んだ人も品質の良さから満足感を得られ、その対価として正当な価格で継続して購入していただくことはとても重要です。このことからピースウィンズでは、長年にわたり高品質化を第一の目標とし、フェアトレード商品だから売れるのではなく、高品質で美味しい“東ティモールコーヒー”だから選ばれるようなコーヒーを目指して生産者と二人三脚で歩んできました。
東ティモールで、生産者がコーヒーを摘みながら歌をうたっていたので、どんな意味か聞いてみたところ…
俺の作ったコーヒーは、海を渡って日本にいく
日本の人は美味しいと喜んでくれているらしい
俺は美味しいコーヒーを作っている
俺の自慢のコーヒーを飲んでみてくれ
というような意味で、自分で作って歌っていると照れくさそうに話してくれました。
コーヒー生産者にとっては、自分の作ったコーヒーが皆さまに選ばれ日本で美味しいと飲んでいただいているという事実がこの上ない自信になり、さらに前に進む力になるんだなぁと実感した経験でした。
コーヒーを選ぶことで変えることができる東ティモールの未来があります。
東ティモールのコーヒー生産者の自信作、私たちの有機東ティモールコーヒー「ピースコーヒー」をぜひお試しください!
