【第九回「2019最後の東ティモールより」】
気がつけば最終週です。札幌は12℃を記録したそうですがディリは今でも連日30℃以上を記録し続けています。この暮らしにも余裕が生まれてきて、こんなこともできるなという視界の晴れに気がつけ始めたと思えば帰国…もっと長く滞在したかったと思います。最近、行きつけになっているスーパーやワルン(東ティモールでポピュラーな、インドネシア流の飲食店形式です。お米と皿をもらった後にショーケースから食べたい具材を自ら載せていきます。)のスタッフの方に行ったら手を振ってもらえるようになったり、談笑をしたり、名前を尋ねられたりするようになってきました。拙いテトゥン語でも会話ができたことや親しくなれたことはとても嬉しい、だけど次の木曜日に帰るんだと彼女らに伝えると残念そうな顔をして「また来てね」と言葉を投げかけてくれます。まだ留学が終わっていない、留学の最中でありますがまた来たいなと強く思います。
先週もまた焙煎をたくさんしました。レテフォホでの手回し焙煎機は行っていないのですが、ディリでは温度上昇の具合やいつ、何度ではぜたのか等の焙煎データを記録しています。そのデータによれば先週でディリでの焙煎回数が50回を超えました。東ティモールに来るまで焙煎を始める決心を今ひとつ付けられず、半ば避けてしまってましたが始めた今では奥深さに夢中です。柔らかな緑色を持ち、雄大な自然を想起させるような香りを放つ生豆が10分くらいの工程でシナモンのような香りを放ち、パチパチッと弾けて、馴染みのある茶色く香り豊かな豆になることが、そして美味しく出来るかどうかが環境、豆の状態、その日の勘の冴え具合それぞれに大きく影響されるということがとても魔法的に感じられ魅了されています。
最後のレテフォホにも行きました。強風が吹き荒れており買い付けに同行できませんでしたが、乾燥工程を現地で働く仲間たちと一緒に行ったり手回し焙煎をしたりと最後の日々を満喫しました。レテフォホ最後の夜、停電が街を襲いました。あたり一面が真っ暗だったので外へ駆け出してみると、薄雲と澄み渡った空がミルフィーユのようにコントラストをなしていました。薄い雲も三日月の光で白みがかっておりとても美しい風景でした。
土曜日にはディリのカフェで公開カッピングが行われておりそれに参加させてもらいました。収穫されたてのコーヒー豆を飲み比べてもらって、いつものお客さんたちに今年のコーヒーのおいしさや農園ごとの豆のキャラクターの違いを実感してもらうイベントでした。農園ごとに味わいが大きく異なることや、水でしっかり洗い切って乾燥させる手法とチェリーのまま乾燥工程に移る手法で作られたコーヒーそれぞれの味わいが全く別物と言えるほど違うことを再度実感しました。また現地のスタッフの方々の意識の高さや向上心を大きく持つ姿勢が垣間見られて刺激を強く受けました。
イベント自体も大盛況で、素敵なものに参加できて幸せでした。
来週の月曜日には僕は東ティモールにいなくて、すでに日本に到着しているということがあまり信じられていません。残り4日、悔いなきよう過ごしたいです。
【颯人通信目次】
第九回「2019最後の東ティモールより」